ISO コラム

適合性とは

適合と適合性の違い

ISO標準では、製品品質を検査して基準を満たしていることをコンプライアンス(compliance)といいます。製品の検査は、普通はサンプリングして行いますから、基準に従ったサンプリングによりコンプラアンスを確認したからといって、母集団であるもとの製品群が全て基準を満たしているとは完全には言い切れないという限界があります。言えることは、母集団が確率論的に基準に適合している、基準を満たしている性格を持っている、と言うことです。これを英語ではコンフォミティ(conformity)と言っており、日本語では「適合性」と言っています。このように、適合と適合性は異なった意味を持っていると言うことを理解しておく必要があります。
マネジメントシステムの適合性の意味

従来、製品の品質などの適合性が関心事でしたが、マネジメントシステムがISOで規格化されたのに伴ってマネジメントシステムの適合性も利用されるようになりました。気を付けておかねばならないのは、製品品質の基準適合性とマネジメントシステムの基準適合性はお互いに補い合う関係にあるが別の性格を持っており、両方相まって本来の意味を持つことです。


適合性評価のいろいろ
取引の当事者が近ければ供給者の製品やマネジメントシステムの適合性を確認することは簡単ですが、遠隔地になるとなかなか難しくなります。特に国際取引ではこれが顕著になります。この解決のために、当事者双方が国際標準を基準として採用し、第三者の専門機関に適合性の評価を委託することが考えられます。ただし、第三者の専門評価機関の評価結果が国際的に受け入れられるためには、評価の方法や機関の中立性を国際的に規定することが必要になってきます。ISOは早くからその必要性に注目して戦略性をもった委員会として適合性評価委員会(CASCO)を設け、標準化を進めてきました。国際市場での取引が活発になり、マネジメントシステム標準が制定されて以来、これの重要性が認識されるようになりました。製品品質の評価(審査)機関の活動についての標準はISO/IECガイド17065、品質マネジメントシステム、環境マネジメントシステムなどの評価(審査)機関の活動についてはISO/IEC17021があります。


第三者適合性認証の目的
このように、第三者適合性評価機関の行う評価(審査)とその結果の証明(日本では認証と言うことになっています)は、取引等の当事者の代行行為の目的を持っていますが、性格上どちらかと言えば購入者等の利害関係者に対する証明をする役割を持っています。つまり、お金を払って適合性評価を依頼する組織に対するサービス提供ではなく、その組織を取り巻く利害関係者を適合性証明の利用者と考えた、説明責任(アカウンタビリティ)が果たされていることの証明だということです。

顧客重視はビジネスの基本

「自分たちはお客様や利害関係者のための適合性証明を取れと求められてない」、「何よりも自社の体質改善のための審査だと期待している」、とおっしゃる方がおられるでしょう。でも、事業活動が継続できる、又は拡大できるのは信用して下さるお客様や利害関係者があってこそのことです。改善は利害関係者が離れていくのを無視して進めても意味がありません。日頃、ついついプロダクトアウト的な考え方になっているのを、審査機関がお客様やその他の利害関係者の立場で審査してくれることで、事業の原点を認識する良い機会になります。また、実際にお客様に説明するときもお客様に分かっていただける説明ができるようになります。社内標準化はどの会社でも大なり小なり取り組んでいるものの、なかなか定着しないのが実態です。審査機関に定期的に調べられるので、定着するようになります。そして、品質や環境などを確保するための取り組むべきことを網羅的にISO標準が示してくれているので、体系的な取り組みができるでしょう。審査と聞くと通らないと大変と思いがちですが、ISO標準の考え方の基本に流れている西欧流の考え方は、人間のやることに完全はない、間違っていたら直せばよい、という前向きの考え方です。そして、お客や利害関係者向けの業務の標準化を進めれば、それ以外の自社の利益向上のための取り組みにも波及し、体質の向上に繋がる事例は数多くあります。ぜひ、上手に適合性審査を使って下さい。
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