文書化と品質マニュアルについて

ISO9001の神髄は文書化とそのための文書管理だという誤解があり、文書ばかり多い品質マネジメントシステムを構築される例が多いので、2000年改定の折りに文書化が絶対必要なわけではないということを明示するように規定が変わりました。そして、ISO9001が義務的に要求する文書は、品質マニュアルと、文書管理、記録管理、内部監査、不適合製品管理、是正処置、予防処置の6種類に絞られました。そして、これら以外にも、組織が必要と判断した手順書、指示書を持つように規格は求めていました。
しかし、品質マニュアルを含むこれら7種類の文書を指定すると、却ってこれら以外の文書は不要だという誤解が生まれたり、他にあるこれらの文書をそっくりマネして、実態と合わないQMSを構築したりする例が生まれてきました。
品質マニュアルについては、うまく作ると顧客への説明責任の手段として有効に使える上、組織内で詳細のシステムを計画する上で有効な基礎資料になりました。適合性審査でも、容易に組織の方向性の全体像を説明できる資料となり、事前に提出する審査資料を低減できるようになりました。しかし、マニュアルという言葉が、機器操作マニュアルのようなイメージを与えるために、文書化QMSの最上位の文書という理解が広がらなかったことが問題と認識されました。
また、手順書という言葉も、機器操作手順書などを連想させ、部門間の指示・情報のやりとりの仕方を指す意味で使われていたISOマネジメントシステム規格のシステム手順書という意味が十分には理解されませんでした。
このような背景で、ISO9001:2015では、品質マニュアル、手順書という用語は一切使わないで、箇条7.5.1b)で「品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した、文書化した情報」という極めて一般化した規定に変わり、箇条4.4.2で、「プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持する」という要求に変わりました。
しかし、組織内への有効な品質マネジメントシステムの展開のための手順書と、顧客や適合性認証機関への有効な品質マネジメントシステムの存在の説明責任のための、適切に策定された品質マニュアルの有効性は変わりませんから、形式的な手順書や品質マニュアルでない限り、いままで策定してきた品質マニュアルや手順書は大事にしていただくことが推奨されます。
ただし、「組織が決定した文書化した情報」という表現があるからと言って、組織に判断が任されている、我が社は不要と宣言しよう、というような恣意的な考え方は適切ではありません。常識的に必要な文書、お客様の目から当然に必要と見られる文書があるはずです。適合性認証機関も「組織の決定が顧客から見て適切かどうか」という観点で評価することになりますので、客観的な判断が大切です。

Copyright(c) 2017 JAPAN CHEMICAL QUALITY ASSURANCE LTD. All rights reserved.