管理責任者について

ISO9001:2008では箇条5.5.2でトップマネジメントに「管理責任者」を指名することを要求していました。これは、経営者が忙しい場合は代わりとして管理責任者を指名して、マネジメントシステムの定常的な監視を行わせるとともに、不適合の発生がある場合や内部監査での指摘事項に対しては、トップマネジメントの代理者としてマネジメントシステム上の是正・改善を行わせ、マネジメントレビューにおいてトップマネジメントへ報告することが必要だからです。
しかし、中小企業では管理責任者を指名できるだけの人的な余裕がない場合があり、その時はトップマネジメントが管理責任者を兼ねるシステムとしてきました。
2015年版では、管理責任者(名称は問わない)を指名できる場合とトップマネジメントが兼任する場合とどちらに比重を置いて規格を規定するか議論があって、前者を基本として規定することになったと考えられます。もちろん、権限委譲といっても丸投げではいけません。責任はトップマネジメントが取らなければなりませんから、管理責任者にはトップマネジメントの考える方法性はしっかり伝えて、状況を把握することが必要です。
ISO9001:2015では、箇条5.1.1「リーダーシップ及びコミットメント-一般」で挙げたa)~ j)の10個の要求の内で、「・・・を確実にする。」という要求を4個規定しています。この「確実にする(ensure)」という言葉は、説明責任は持たなければならないという条件は付くが責任を委譲することができるということを意味していて、2008年版でいう管理責任者を指名して委譲してもよいことを意味しています。
なお、「管理責任者」というのは特定の職名を意味する固有名詞ではなく、一般名詞としての「マネジメントの代行者-management representative」を意味していましたが、一部には組織の中に「管理責任者」という職名を置かなければならないと思わせられた組織もあったこともTC176の委員の懸念であったのではないかと思われます。
ISO9001:2015では「・・・を確実にする。」という規定を採用することによって、「管理責任者」という用語を使わないで委譲する場合も、委譲しないでトップマネジメント自ら行う場合もカバーするようになりました。
従って、いままで「管理責任者」を指名して「・・・を確実にする。」という4要求に対する対処の実行権限を委譲してマネジメントしてきた組織は、特に不便がなければそのまま継続して良いのです。組織が小さいが管理責任者を指名することが要求されていると誤解して無理して管理責任者を置いてきた組織は、この機会にトップマネジメントが自ら箇条5.1.1の要求に対する対処を行うようにQMSを見直しても良いのです。
なお、管理責任者には権限を持たせていますので、関連管理職層の下位の人を指名することはよほど考えないといけないと考えます。経営者の直近の人で、経営者に常に接触している人が適切でしょう。経営者は誰かを職名で決めておいて、品質マニュアルに記述しておくことが、品質マネジメントシステムのアカウンタビリティのために望ましいことだと考えます。

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