ISO14001の取り組みの注意点

ISO14001に取り組む組織は、ISO14001をよく読んでください。
解説本も多数出ると考えますが、自組織の事業活動の視点を見失うことのないようにしてください。規格の序文は基本的な考え方の理解に役立つと思います。また、附属書Aにある情報は規格の理解のためのガイダンスになります。
ここでは、第三者適合性認証を目的としてISO14001を適用することを想定して注意点を書きます。

1.ISO14001適合性認証の目的について

適合性認証について規定しているISO/IEC17021-1:2015の4.1.2では、認証の目的は、

    a)認証機関への依頼者
    b)マネジメントシステムが認証された組織の顧客
    c) 政府関係当局
    d)非政府組織
    e)消費者,及び社会のその他の構成メンバー

 
等の全ての関係者に組織が運用している当該のマネジメントシステムが規定要求事項を満たしているという信頼を与えることであるとしています。組織自身(認証機関への依頼者)も認証の価値の受益者ですが、第三者適合性認証の最大の価値の受益者はb)~e)等のいわゆる利害関係者です。
そして、認証のための審査は、犯罪捜査のように組織が規定要求事項を満たしているかを認証審査員が独自に調べるのではありません。ISO/IEC17021-1:2015の4.4によると、認証を得ようとする組織がまずマネジメントシステム規格(EMS認証の場合はISO14001)の意図した結果を一貫して達成していると責任を持って説明できる状態にして頂き、認証の申請していただきます。審査員は、その説明が信頼できると判断できるかを、十分な客観的証拠を探して審査をします。
適合性認証を自組織のための審査員の活動と誤解しないように、また、組織が積極的な説明責任を心がけなければならないことを忘れないで取り組んで下さい。

2.環境マニュアルの書き方について

環境マニュアルは何のために作っているのでしょうか?
ISO14001は明示して「環境マニュアル」と言うものを要求していませんが、5.2で要求されている組織の枠組みと要求されている各種コミットメントを含んだ環境方針を骨子とする、利害関係者に伝えるための文書の役割を持っています。しかし、時には、規格のオウム替えしになっている例が見られることがあります。
環境マニュアルは、組織にとってみれば、組織で働く人々や組織のために働く人々のための組織の取り組みの概要説明文書、教科書となります。事業所長、工場長の引継文書ともなります。全社で認証を得ている場合は社長の引継文書です。それとともに、第三者認証を受けると言うことは、周りの利害関係者に我が社はこのように取り組んでいますという説明文書でもあります。ですから、組織の秘密にしなければならないような事項を含まないようにする必要はありますが、実際的な分かりやすさと、論理的矛盾がないことが必要です。そのためには、抽象的に見える規格の要求事項に対して、どこが(誰が)どのように対応しているかを書けばよいのです。管理職など部下に環境マネジメントシステムを周知徹底する立場の人も、具体的に書かれていますから、これを基に説明しやすくなります。
これを読むとその組織のEMSの全体像(概要)がわかるというような書き方が最も望ましい書き方で、規格の要求事項をそのまま書き並べたようなマニュアルでは意味がありません。細かい点については○○規定参照ということでもいいのですが、簡単な内容の項目については下位文書をやめてマニュアルだけですませた方がよほど使いやすいと思います。

3.組織の内外の課題について

2015年版で組織の内外の課題の明確化が要求されることになりました。この要求はEMSを構築したり変更したりするときに、まず考えるべきこととして要求されています。過去に実態から遊離した環境マネジメントシステムを構築し、有効性が得られていなかった事例を考えて導入された要求と考えています。環境マニュアルを作成しているとすれば、序文に当たる部分に書いておくことが考えられます。
「ISO9001への取り組み」の中の説明が参考になると考えます。

4.利害関係者とそのニーズと期待の理解について

ISO9001は顧客が中心の利害関係者になり、顧客層や潜在的顧客層を特定してQMSに関する潜在的な要求を理解してQMSに取り組むことになります。これに対して、ISO14001は特別の場合を除いて、ISO9001における顧客のように特別の利害関係者が存在している訳ではなく、各種の環境影響を受ける利害関係者を特定して、それらの利害関係者がどのようなニーズと期待を持っているかを組織が明確にすることを要求しています。これも、実態から遊離した環境マネジメントシステムが構築されないことを狙った規定と考えます。

5.適用範囲について

2015年規格では、適用範囲を定めるに当たって、組織単位、機能及び物理的境界、組織の活動、製品及びサービス等の「境界」と「適用可能性」を決定する事を求めています。「適用可能性」は規格に要求事項の内で、当該の活動には影響を及ぼさないために適用する必要がないことを意味しています。ただし、組織の勝手で適用しないと決めることは認められません。
協力会社やサイトにある本社の組織が入るのか入らないのかも明確に書いていただきたいと考えます。

6.リスク及び機会への取り組み

2015年規格は、環境側面、順守義務及びその他の課題、要求事項に関連するリスクと機会を決定して環境マネジメントシステムを策定することを求めています。更に、これらのリスクと機会を考慮して、関連する部門や階層の環境目標を設定して、それらの取り組み計画を設定することを求めています。
リスクと機会については、若干混乱もみられますが、一般に何か計画を作ろうとするときに、計画で対処すべき問題点と、伸ばすべき機会を考えることは、意識しているかいないかにかかわらずおこなっていると思いますので、落ち着いて規格を理解するようにされると良いと考えます。

7.文書類

2015年版の規格では手順の文書化を求める規定が影を潜め、7.5.1のb)で「環境マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,文書化した情報」という規定になりました。このため、文書化要求が緩和されたという意見もあります。しかし、第三者適合性認証を受けるためには、まず、マネジメントシステム規格の意図した結果を一貫して達成していると責任を持って説明できる状態にして頂くことが必要だと言うことを先に言いました。この信頼性を担保するためには、文書が重要な役割をすることを理解していただきたいと考えます。第三者適合性認証を得るためには、「必要であると組織が決定した文書化情報」は、原則的には緩和されたわけではないと理解する必要があります。
なお、ISO14001:2015はマネジメントシステム規格類の整合化のためのAnnex SLにもとづいて作られているために、品質マネジメントシステムや環境マネジメントシステム、更に労働安全衛生マネジメントシステムはお互いに共通な部分がありますから、システム文書の簡素化が可能かも知れません。

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